「ママ、あのね。」 ‐子どもはいつだってママが大好きなんだ‐

No tags for this post.
「ママ、あのね。」 ‐子どもはいつだってママが大好きなんだ‐

「あのねー。あのねー。」

本人も毎日見ているはずの家の色や、車の色、おもちゃの色について
質問が飛ぶ。

むらさきだよ。あおだよ。みどりだよ。

「あのねー。あのねー。」

今の今まで一緒に見ていた戦隊シリーズのストーリーを
鼻息を荒くし言葉を右往左往させながら説明が始まる。

そっかそっか。デジャヴかな。

「あのねー。あのねー。」

とにかく私と妻の目を自分に向けようと
怒られるのを承知で口いっぱいにご飯を詰め込みながらお喋りが止まらない。

こら!
ごっくんしてからお喋りしようね!
全然へこたれない。

 

去年の九月。
私と同じ誕生日に次男が産まれた。
予定日を1週間以上も早め、タイミングを合わせてくれたのか。

家族経営の小さなカフェだ。
地元イベントへ出店も重なり、とにかく周りの皆が出産に向け、大慌てだった。

それでもスタッフやお客様方のご理解と優しさにも救われ
無事にこの世に生を受けることができた。

しかし
妻が出産一週間ほど前から容態の悪化が原因で入退院を繰り返していた事、
また、私も店舗の業務をこなしながらの長男と二人きりの生活。

正直あの一週間は妻も私も限界を超えていた。
だが、なによりしんどかったのは長男だっただろう。

異変は明らかだった。
普段はしないような悪戯やわがまま。
奇声を発したり、いつもは残さないご飯も毎日のように食べずに残る様になった。

朝起きて。
ご飯を作り、一緒に食べて。
保育園に送り。
カフェの営業を行い。
夕方にお迎え。
お店の片隅で晩御飯を食べさせて。
夜の営業が終わるのを待ち。
そこから一緒にお風呂に入る。
そして私の布団で寝かしつける。

長男が寝たのを確認し、私は晩御飯を食べる。
ふと寝室を除くと、妻の布団に移動して寝ている。

なんだかやけに周りが慌ただしい一週間で
いつも自分だけに向けられていた目や言葉たちが極端に減って
これからお兄ちゃんになるなんて恐らくピンとも来ておらず
ただただ寂しい想いをし、戸惑っていた事だろう。

「あのねー、あれは機関車なんだよー。」

空に浮かぶ白い様々な形のそれを、
あれは雲だよ。と言った。

「せなか痒いから、ぽりぽりしてあげるのー。」

おもちゃは背中痒くならないから大丈夫なんだよ。と伝えた。

「おみず、自分で入れられるー。」

倒して水まみれになった机を、迫る時間を言い訳に
イライラが顔と態度ににじみ出る。

「ねぇねぇ、どうしておでかけするのー?観覧車のところいくのー?」

破水した妻の病院に駆けつける夜中の車中、バタバタと暴れる息子に
慌てた私は情けない事に、感情的になり
ママのところに行くの!遊園地になんて行くわけないでしょ!
赤ちゃんが産まれるんだよ!運転危ないから静かにして!
と声を荒げた。

なんであの時もっと優しく返事をしてあげられなかったのだろう。

どうしてもっと向き合えなかったのだろう。

せっかくの感性や優しさを、“教育”なんていうものを後ろ盾に
否定するような事をなぜ言ってしまったのだろう。

とても後悔した。
一番辛いはずだった長男を、なぜもっと受け止めてやれなかったのだろう。
その後悔をすこしでも解消したいという自己嫌悪感から
ちいさなヒーロー物のおもちゃを買い与えた。

ソフビの安い人形型の、お菓子付きの物だ。
次男も無事産まれ、病院のお見舞いの帰りのスーパーで見つけたやつだ。

長男は喜んでそれを手に、戦いごっこを始め
パパー、一緒にあそぼー。
と戦いを挑んできた。

「よし!やるか!」

久しぶりにたくさん二人で暴れまわった後、
汗だくのままソファに座り、長男を膝の上に乗せ、
この一週間、よく頑張ったね
ごめんね、ありがとう。
と伝えた。

すると長男は
「ブラックがぼくで、レッドがパパね。赤ちゃんはイエロー。
だって強いんだよ。
負けないんだよ
やっつけるんだよ
みんなで守るんだよ。」
と言った。

「そっか。皆で赤ちゃんを守ってあげようね。」
といった私に

「違うよ、ママを守るんだよぉ。」
と人形を握りしめ、見つめながら呟いた。

その優しさと言葉に、溢れだした涙を隠しもせず抱きしめる。

そうか、息子は妻が心配なだけだったのか。
いつも元気で笑顔な妻が、病院にお泊りしていると聞き
いつも隣にいた妻が朝も晩も居なくなり
いつも悪戯すれば飛んでくる大きな声が無くなって。
パパに怒られた時に優しく抱きしめてくれる腕と胸がそばにない。

もう来月で次男も一歳を迎える。
今となってはすっかりお兄ちゃんを気取って、いたずらも、いじわるも。
そして妻のお手伝いも、私のお願い事も。

怒られたり、褒められたりしながら
お兄ちゃんライフを奮闘している。

私は、あの一週間を忘れない。
本当に色々と気付かされ、身に染みた、忘れようにも忘れられない一週間だった。
と、言いながら日々怒ってしまっている自分がいるのだが。

息子は、あの一週間を忘れたのだろうか。
あんなに大切にしていたあのソフビ人形が

ホコリまみれでソファの下からこちらを覗いている。

13624512_877585322369576_1029062351_n
髙久保 渉

Cafeラルゴ 代表(オーナー)
http://cafe-largo.net

2014年よりサラリーマンをしながら全国初の妊娠中・育児中をターゲットとした完全特化のマタニティカフェ事業の試験運営を開始。地元企業や団体、子育て世代の方々とのイベントを実施しながら、交流を深めていく。2015年8月、脱サラ後、「Cafeラルゴ」を群馬県桐生市にオープン。“大きな子供たちの未来に、小さなひとつのキッカケを。”を掲げ現在も数多くのイベントを主催し、子供たち・育児中の方々・妊婦さん達の輪と縁を与える活動を行っている。

編集部おすすめ商品

MATERNITY SOUP

妊娠中の栄養補給とマイナートラブルのために

マタニティスープ

妊娠中の食生活が気になるママに。
産婦人科 佐藤病院・妊産婦ケア専門の管理栄養士・お子さんのいるママの声から生まれた
妊娠中のママとおなかの赤ちゃんのためのスープです。

MATERNITY SOUP

妊娠中のママとおなかの赤ちゃんへの贈り物

マタニティスープギフト

これからママになる大切な人への妊娠祝いに。
妊娠中のママが元気に安心してマタニティライフを送れるように
家族や友人みんなで食生活をサポートするマタニティ応援ギフトです。

マタニティスープは妊娠中の女性たちととことん向き合って開発しました

最新記事